自分という一生のパートナーと仲良くなるために

「自分を責める声が止まらない」「どうしても不安に飲み込まれてしまう」。そんな心の苦しみを科学や心理学の視点で見つめ直し、自分自身を温かく支える力を育むアプローチがあります。

それが、コンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT)です。

CFTを開発したポール・ギルバート

このセラピーは、イギリスの臨床心理学者ポール・ギルバート教授によって開発されました。 面白いことに、ポールはもともと経済学を学んでいました。その背景から、「心や脳を一つの仕組み(システム)として捉える」という独自の視点を持つようになります。

彼がうつ病の治療に携わっていた1980年代、ある不思議な現象に気づきました。多くの患者さんは、頭では「自分は悪くない」と理屈で理解していても(頭の理解)、心の中では「それでも自分はダメな人間だ」という激しい自己批判に苦しみ続けていたのです。 ポールはこの現象を「頭と心のミスマッチ(Head-heart mismatch)」と呼びました。これを解決するために、脳科学や進化心理学、そして東洋の知恵を融合させて生まれたのがCFTなのです。

コンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT)とは

CFTは、私たちの脳を「生存のために進化した、とても厄介なもの(Tricky Brain)」として捉えます。私たちの脳は、幸せになることよりも、生き残ることを優先して設計されているため、どうしても不安や怒りが強く働くようにできているのです。

CFTは、このアンバランスな心を、安らぎを感じる「スージングシステム」を活性化させることによって整えていくための、包括的な心理モデルです。

コンパッション・マインド・トレーニング(CMT)とは

CFTが「心の仕組みを学ぶ知恵」であるのに対し、CMTは、その知恵を体感に落とし込むための「具体的な練習」を指します。

筋肉を鍛えるのにジムへ通うように、CMTでは以下のようなトレーニングを通じて、脳の中に「安心の通り道」を作っていきます。

  • スージング・リズム・ブリージング: 特有のリズムの呼吸で、神経系に安全信号を送る。
  • イメージワーク: 理想的な「安心できる存在」を心に描き、生理的な安心感を呼び起こす。
  • コンパッション・セルフ: 賢く、強く、温かな自分自身を「演じる」ことで、新しい心のあり方を馴染ませる。

「あなたのせいではない(Not your fault)」

ポール・ギルバート教授が一貫して伝えているメッセージは、「あなたが苦しんでいるのは、あなたのせいではない」ということです。 私たちは、選んでこの脳を持って生まれたわけではありません。でも、その脳とどう付き合っていくかは、今日からの練習で選ぶことができます。

CMTを通じて、あなたの中に「一生ものの安心感」と、どんな時もあなたの味方でいてくれる「思いやりの心」を育てていきませんか?